バジルと笹塚。

そろそろ何か書かないとと思うけど何を書けばいいかわからないので今日の日記を書きますね。

 

6月9日、今日はお昼ごろ起きた。

 明るい陽光がカーテンの隙間から差し込んでいて、窓を開けるとベランダの外にある大家さんの大きな植木鉢が目に入る。そこには先週こっそり蒔いたバジルの種が芽を出していて、小さな命を愛でる気持ちとこのまま育つと大家さんにばれてしまうという困惑が同時にやってきて、ふたつの感情に挟まれた。

正午すぎに無意味に挟まれていると自然にコンビニのサンドイッチが食べたくなる。人間。洗濯機を回している間に買いに行き、食べ終わると同時に洗濯が終わる。

休みの時間は無駄にしたくない。

そんなことを考えているとサンドイッチのテリヤキソースがTシャツに落ちる。

真っ白いTシャツにできた茶色いシミは、まるで社会に紛れ込んだ僕の様だった。

そんなことはどうでもよくて、もう一度洗濯機を回すのも大儀なので手洗いし、半分濡れたままのTシャツを着て出かける。

 前々から行きたかったアンティークの家具屋さんが笹塚にあって、そこに今日はいくと決めていた。

天気がいいし、イヤフォンからはMaroon 5 。けれどMaroon 5は僕の中ではぎりぎりミーハーなやつらなので聴いていることを周りに悟られてはいけない。お忍びのBGMなのである。今では大分丸くはなったけれども、中学生の頃からこのミーハーとの戦いは続いている。誰の為でもない大儀のない戦いだということはわかっているのに。まるでアメリカ共和党

 新宿駅京王線のホームで駅員さんに乗換えを聞いたら、今朝恋人の不貞が発覚したのであろう。とても不機嫌で無愛想だった。もしくは恋をしたことがないのかもしれない。バジルの苗をあげたくなった。

笹塚は小川が流れていて、太った鳩がいて、レモンの次くらいにレモン色のサボテンの花が咲き乱れていて思いのほか落ち着いた街だった。

 家具屋さんでは欲しかった大きさの大正時代か昭和初期頃のあくまでアンティークな箪笥が見つかって、嬉しかったので序でに李氏朝鮮時代の間の抜けたおじさんたちが描かれたあくまでアンティークな木箱と合わせて買った。

 帰りに折角笹塚に来たので爪痕をもうひとつ残さないといけないという義務感に駆られ、定食屋さんに入った。メニューにあった鮪のステーキ定食と生ビールを頼んで大人の時間だった。

お会計の時に奥で煙草を吸っている店主がこちらをじっと見てにやけていて意味がわからなかったので、できるだけミャンマー人の店員さんの方を見ながらお金を払った。

 

外に出るともう夜が来ていた。

京王線に乗り、ひとり家路につく。

 

やっぱり、ひとりで家に帰る気がないMaroon 5 はミーハーだなと思いながら聴いていた。

 

Maroon 5 / Won’t Go Home Without You

youtu.be

 

 

東京

東京に来て半年が経った。

 

 あの日アボカドの苗木を抱きかかえて、上越新幹線から眺めていた越後湯沢の緑が、目が覚めたときには灰色になっていて、オレンジ色の電車に乗り換えて街を横切るとき、故郷のロックスターは冷凍都市なんて歌っていたし、駅でたまに昔のだれかを懐かしくなって訳の分からないこと言っていますってなるのか、

なんてことを考えながらの上京だったわけだけれど、そんな瞬間もなく半年が経った。

 

 高校生の頃、休み時間にMD ウォークマンで、銀杏BOYZを聴きながら高円寺という街に住めば何者かになれるんじゃなかろうかとか、西荻窪で銭湯に麻生久美子と通う日が来るんじゃないだろうかとか、悶々と考えていたのだけれど、

27歳という、何者にもなれないという一種の失望にゆったりと浸った後での上京だったので、この街でやっていけているのだと思う。

 

何者にもなれないけれど、なれないなりにやっていく。

 

 おやすみBGM

いい時間/EVISBEATS

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